「docomo Open House’22」でみた6G時代の「テレイグジステンス」と「メタバース」

docomo Open House’22

NTTドコモは、1月17日から19日の3日間、他社との共創イベントであるdocomo Open House’22を開催している。いまだコロナ禍の中ということで基本的にはオンライン開催だが、メディアと一部関係者向けにリアル展示で内容を紹介する形も採られている。本記事では、特にXRに関わる領域について概要をお伝えしたい。

加速し始めた「6G」への動き

冒頭で述べたように、同イベントはNTTドコモの最新技術を公開しつつ、同社と他の企業が協業するとどのようなものができるのか、ということをアピールする場である。すなわち、役割が2つあるわけだ。

まずは前者から行こう。NTTドコモは現在、5Gのサービス拡大と、5Gを生かしたビジネスの創造に力を入れている。一方で、そろそろ「次」も想定しなければいけない時期に差し掛かってきた。すなわち「6G」だ。

NTTドコモ・執行役員 R&Dイノベーション本部 6G IOWN推進部長の中村武宏氏は、記者向けのブリーフィングの中で次のように説明する。


(NTTドコモ・執行役員 R&Dイノベーション本部 6G IOWN推進部長の中村武宏氏)

「通信の規格は概ね10年おきに登場する。5Gが2020年なので、6Gは2030年。ただ、6Gは5Gよりも早く動いており、ホワイトペーパーなどが既に大量に出始めている。5Gの時に比べ3年くらい前倒しで動いている。10年おきだとすると商業化は2030年が想定されるのだが、世界的にはそれが前倒しになる可能性がある」


(現状の6Gへの取り組み。5Gに比べ前倒しであるのがわかる)


(現在の標準化スケジュールでは、6Gは2030年頃から商業化となっている)

NTTドコモも5Gの進化(5G Advanced)と6Gに関するホワイトペーパーをVer.4まで公開しているが、同様のものが世界中で作られており、6Gへの準備が進められている。

5Gの先、6Gの技術的なスペックは定まっていないが、おおよその方向性は見えてきている。1つは、今の5Gよりもエリアのカバーを「はるかに広げる」こと。地上はもちろん、建物の中、海上、宇宙へと、さまざまな技術を併用してエリアを広げる。


(5Gから6Gへ向けて、地上以外のエリア化が模索されている)

そしてもう一つが、高い周波数帯を広く使い、さらに高速な通信と低い遅延を実現することだ。こちらは5Gの延長線上といえるが、さらに徹底したものになる。例えば、NTTドコモが工場内での利用を想定して作ったシミュレーションでは、100GHz帯の電波を中心に、8000MHz分という広い帯域を使って、100Gbpsを超える通信速度を実現したという。

(NTTドコモによる、6Gの工場内利用を想定したシミュレーションでは、100Gbpsを超える通信速度を実現する)

遅延に関しては1ミリ秒以下になることが想定されている。そのため中村氏は「2030年代に向けては、ぶっ飛んだようなユースケースを生み出していかなければならない」と話す。

そこで出てきたのが「人間拡張基盤」という考え方だ。


(NTTドコモが「ぶっ飛んだユースケース」として持ち出してきたのが「人間拡張基盤」。この絵だけでは何のことやらよくわからないので解説する)

神経の速度を超える6Gを使って「テレイグジステンス」を

人間拡張基盤、といっても何のことかさっぱりわからない。同日、NTTドコモはニュースリリースも発表しているが、なかなかにSFじみていて、言葉からは意味がすぐに掴み取れない。

6Gの特徴的な技術の一つである超低遅延化の実現により、6Gでは神経の反応速度をネットワークの通信速度が超えるため、脳や身体の情報をネットワークに接続することにより、ネットワークで人間の感覚を拡張することが可能になると考えられています。今回ドコモは「人間拡張」としてめざしている、「身体のユビキタス化」、「スキルの共有」、「感情の伝達」、「五感の共有」、「テレパシー・テレキネシス」のうち、「身体のユビキタス化」および「スキルの共有」の実現に向けて、他者間の動作の共有を可能にする本基盤を開発しました。

(NTTドコモのニュースリリースより引用)

これは一体どういう意味を持っているのか? 中村氏は次のように話す。

「1ミリ秒以下ということは、もう人間の神経伝達速度より速い、ということ。ならば、ネットワークを人間の神経の代わりにできるはず。人の動きや感覚を、ネットワークを介して違う場所に届けられるわけです」


(「人間拡張基盤」について解説する中村氏)

これはまさに「テレイグジステンス」にほかならない。現在、VRで体にセンサーをつけてボディトラッキングをしているが、それが伝わるには相応のラグもあるし、全てが伝えられるわけではない。仮に人間の神経と同じような速度で同じような情報を伝えられるのだとすれば、自分の感覚を他の場所に伝えたり、他の場所からの感覚を自分で感じたりできるわけだ。

「別に人間同士じゃなくてもいい」そう中村氏は言う。ロボットを遠隔操作したり、逆にロボットの感覚を自分へとフィードバックしたりしてもいいし、リアルには存在しないもの、要はメタバース内のアバター動作に使ってもいいわけだ。

「ただ、その時には、ストレートに伝えるだけではダメです。関節構造や感覚が人間と違うので、下手をすれば怪我をしてしまう。感覚情報を読み替え、それぞれに適した形にして伝送することが必要になります」(中村氏)


(人以外とつなげる際の「インターフェース」としての役割まで考えたのが「人間拡張基盤」だ)

なるほど伝送するだけでなく、経路に入って「インターフェース」として適切な変換作業を行う、という発想だ。NTTドコモのいう「人間拡張」とは、6Gのような高速回線を使うことと、回線上のサーバーで「伝わる相手同士」に合わせた適切な変換を行うことを組み合わせた概念なのだ。

会場では、筋電位センサーを使って腕の動きを読み取るデモや、腕に対してフィードバックを与えることの両方を使ったデモが行われていた。筋電位を使いロボットを動かしたり、指の動きを筋電位から読み取ったりする形だ。現状6G回線はないので、もちろん、直接接続で実現されており、「将来はこうなる」という一種のデモンストレーションである。


(筋電位を使ってロボットを操作するデモンストレーション)


(筋電位から指の動きを読み取るデモンストレーション)

これら自体は色々なところでデモが行われているし、開発を進めている企業も多い。例えばVR関連だと、MetaのReality Labが筋電位を使ったハンドコントローラーを開発中だ。それ自体に特別なところがあるわけではない。だが、ドコモが「回線の進化の行き先としてのテレイグジステンス」を真剣に考えているというのは、非常に興味深い点である。

VR空間での「モーションキャプチャ」活用をアピール

特に今回、ドコモが力を入れているのが「バーチャル空間内」の活用だ。以前よりNTTグループは、グループ内で開発したバーチャル展示ソリューション「DOOR」を使った展示や発表会を行なっているが、今回もDOORを使い、PC/スマホ/Meta Questを使った参加が可能になっている。


(バーチャル展示スペースである「DOOR」を利用している。https://openhouse.docomo.ne.jp/main/vr )

会場では、そのうち2つの部分について、特に解説を含めたデモが行われた。1つ目は「ボリューメトリックキャプチャのストリーミング配信」。今回は、Perfumeの「ポリゴンウェイヴ」のパフォーマンスをボリューメトリックキャプチャしたものが展示された。通常この種のものはデータをダウンロードして再生されるが、このデモでは、Perfumeの3人のモデルも周囲の様子も、データはストリーミングで提供されていた。ダウンロードを待つ必要がないこと、著作権的な安全性が高まることなどが利点である。



(Perfumeのパフォーマンスを使った「ボリューメトリックキャプチャのストリーミング配信」デモ。もちろんDOOR内でも体験できる。)

2つ目は「モーションキャプチャのリアルタイム配信」。これについては、同日以下のようなプレスリリースも行われている。

デモは円谷プロダクションと共同で作られた、DOORの仮想ブース内で行われた。ウルトラマンや怪獣のモデルが動くわけだが、その動作は都内にあるモーションキャプチャスタジオから得られたデータを使っている。リアル会場で次にやってもらう動きを指示し、その通りに動いてもらうことで、「このデモがリアルタイムである」こともアピールしていた。


(都内のスタジオでキャプチャされたモーションを、タブレット・会場のテレビ・Quest 2へとリアルタイム配信)

この配信のポイントは、リアル会場で見たデモも、DOOR内で他の人々が見ていたデモも、「まったく同じリアルタイム配信されたモーションである」ということだ。

モーションを少数のクライアントにリアルタイム配信するのは難しくないが、大量の人が見ているクライアントに配信するのはなかなか難しい。今回の技術では、動画配信やウェブメディアなどと同じように「CDN(Content Delivery Network)」を活用、同時に大量の人へと同じモーションを、リアルタイムに配信することを実現した。

VR内でのコンサートも増え、「メタバースのイベントスペースとしての可能性」が重視されているが、これまでは「収録済のモーションを配信する」のが基本だった。だが、リアルタイムでのモーション配信が手軽になれば、よりリアルタイム性の高い形でイベントを行えるようになる。リアルタイムとは言いつつ、現状は、技術的な制約により3〜4秒の遅延が発生しているが、それでも、大きな変化と言えるだろう。これもまた、回線速度や遅延の変化によって、価値が変わってくることの実例と言えそうだ。

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